『卵の緒』|瀬尾まいこ

小説
蒔

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今回は、瀬尾まいこさんの小説、『卵の緒』をご紹介します。

本作は、「卵の緒」「7’s blood」の2編からなる短編集です。
難しい言葉や表現が少なく、とても読みやすいので、穏やかな気持ちで読書したいときにおすすめ。

私がこの本を初めて読んだのは、中学生のときでした。
それ以来擦り切れるほど何度も読んでいますが、毎回、悲しいわけでもないのに、ふいに涙が出そうになります。

自分の捉え方次第で、世界は思っていたより優しさに溢れた場所になるのかも…と思わせてくれる、素敵な作品集です。

「卵の緒」

ざっくりあらすじ

自分は捨て子ではないかと疑う小学生、育生の視点で語られる表題作「卵の緒」。

育生はあの手この手で出生の秘密を知ろうとしますが、母親はなかなか強者で、謎は深まるばかり。
それでも誰よりも惜しまず愛情を伝えてくれる彼女は、果たして本当の母親なのだろうか?

感想

僕は捨て子だ。子どもはみんなそういうことを言いたがるものらしいけど、僕の場合は本当にそうだから深刻なのだ。

瀬尾まいこ『卵の緒』新潮社

引用の冒頭部分を読むと、いかにも「深刻」な展開のようですが…
この物語の楽しいところは何といっても、素直で優しい育生と、愛情たっぷりでパワフルな母親とのやり取り。読んでいて顔がついほころんでしまう可愛らしさなんです。

ああ言えばこう言う、ちょっと憎たらしいけど憎めない…
誰かに似ていると思ったんですが、どことなく私の母親に似ていました笑

育生たち親子以外の登場人物のキャラクターもしっかり伝わってきて、80ページ足らずの作品とは思えない!

家族、親子、友達と名前を付けてはみても、結局はその人たちの間にしかない愛の形があるし、愛情表現の仕方も無限にあるよね、と感じました。

育生の気持ちで読んで、母親の気持ちで読んで…何回でも読み返したくなります。

「7’s blood」

ざっくりあらすじ

家庭の事情で、二人で暮らすことになった七子と七男。
名前から想像されるとおり、二人は姉弟。
ただし七男は愛人の子、つまり異母兄弟だった。

最初は七男との距離を測りかねていた七子でしたが、一緒に暮らしていく中で、徐々に気持ちが変化していく。

感想

会ったこともない父親の愛人の子と、二人きりで暮らすって、どんな気持ちだろう…
と、まず考えさせられました。

私も七子と同じように、素直に受け入れて、可愛がるという気持ちには、すぐにはなれないんじゃないかと思います。
私自身の境遇とは何も似たところがないのに、七子の気持ちにすっと入り込んでしまいました。

最初は血縁関係しか繋がりがなかった二人。
もっと確かな絆が築かれていく日々が、丁寧に描かれていて、じわじわと心が揺さぶられます。

ラストシーンはぜひ、静かな場所でゆっくり読んでみてほしいです。

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