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今回は伊藤比呂美さんのエッセイ集、『ウマし』をご紹介します。
伊藤さんの本職は詩人ですが、エッセイについても向かうところ敵なし。
私が初めて読んだのもエッセイでした。
詩人ならではの、みずみずしい言葉の使い方にはっとさせられます。
どれだけ飾りなくズバッと本音を書けるか?と挑戦しているかのような新鮮な文章。
本書はグルメエッセイにあらず、かといって異文化エッセイでもなく…
説教臭さゼロで「食べる」本能に訴えかけることばの数々です。
ざっくり概要
東京、熊本、カリフォルニアで、目まぐるしく生きて、食べてきた。
作って、食べて、味わって…
子育てや夫の介護を終えた詩人が描く、「食べる」ことの原点と新境地。
感想
私事ですが、中学から高校にかけての数年間、摂食障害を経験しました。
何が1番辛かったかって、「おいしい」と「満腹」が世界から消えてなくなったことです。
何を食べても美味しくないし、いくら食べても飢えたまま。暗黒の日々。
高3のある日、数年ぶりでおなかいっぱいと感じた時の気持ちは、たぶん一生忘れません。
好むと好まざるとに関わらず、食べることは生きる気力に直結してるんだなあ、と思いました。
この本を読んで、その時の気持ちがまた鮮やかによみがえりました。
食べ物エッセイを読んで、これ食べたい!となることはよくあります。
でもこの本は、「食欲」の根本が揺さぶられる感じ。
以下は、長年苦手としていたチーズを克服した時の心境。
ああ、このまま服を脱ぎ捨てて外に飛び出し、「ゆりいか、ゆりいか」と叫びながら走っていきたい。「どうしましたか」と聞かれたら、「チーズをおいしくいただきました」と答えたい。
伊藤比呂美『ウマし』中央公論新社
そう、ものを美味しく食べられるってことは、それくらいの感動だよね!と首が痛くなるほどうなずきました。
食欲がない、すなわち諸々の気力がない時に読み返したい1冊です。
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